くる。くるう。

<箱崎 藍之介>



届いちゃった…」
家に一人で留守番していると、玄関のチャイムが鳴った。出ていくと、宅配便で代引の荷物だった。…時間帯指定というサービスにこれほど感謝したことはない。まさに狙ったかのように一人っきりの時間に荷物が届いたのだから…。

  文貴ははやる気持ちを抑えながら自分の部屋に大事そうに箱を抱えて行き、部屋に入るなり鍵を閉めた。荷物を勉強机におき、胸の動悸が早くなっている自分を落ちつけようと、ふぅ…と一つ深呼吸をした。

  本当に買っちゃった…。

  20cmの大きめのバイブ…。

  事の発端は田島に貸してもらったエロ本だった。中身はもちろん男性と女性が絡み合うものだったが、その中で女の人がディルドがついた黒いベルトを腰に巻いて、男の人をバックで犯している写真があった。「これ…気持ちいいのかな?」という質問に、田島は「なんでも前立腺ってのがあって、男も入れられるとものすごくいいらしいぜ」と言った。ただ、文貴はその場で田島に入れてもらうことは思いつかず、何事もなく家に帰った。

  …が、その日から文貴はオナニーの時に後ろを空いている左手でいじるようになった。最初は恐る恐るであったが、次第に慣れてきてボディーソープなんかで滑りを良くすれば、中指も奥まで簡単に入るようになっていた。いつの間にか指の本数も増え、1か月もすると3本の指が入るようになっていたが、それでも我慢できない文貴は、インターネットでゲイショップの通販サイトを探しだし、今回の大型バイブの通販購入に踏み切った…。

「さてと…」
  小さく一人でそう言った文貴は服を脱ぎ始めた。深呼吸のおかげで、表面的にはすごく落ち着いた状態ではあったが、それでも胸の鼓動が早い。ふと、鏡に映った自分が目に入る。モモカンの割合厳しい練習のおかげで、筋肉がつきつつも体重が減っていて、大人の男の躰へと変化を遂げつつある。その発展途上な肉体が逆にいやらしさを醸し出している。

  いよいよズボンに手をかける。一気にトランクスまで下して、文貴は解放された。大人になるつつある上半身と同様、下半身も足の筋肉もついてきており、順調に成長している。そして…肝心のモノも例外ではなく発展途上で、平常時で半分ほどピンク色の顔を出している。今はもう我慢できないといった様子で立ち上がり、綺麗な色をした亀頭が完全に露出している。文貴は机の上に置いておいた箱を開ける。中からはローションのボトルと電池、そして…いよいよ黒い塊が現れた。その予想外の大きさに、文貴は身震いしながらも、これを入れたらどんなに気持ちよくなれるのだろうかと、期待に胸を躍らせていた。その文貴の思考と直結しているかのように、ビクビクと文貴のそれも脈を打つ。もう…我慢できないっっ…。

  文貴は急いで電池を入れると、スイッチを入れてみた。と同時に、ケータイのまさにバイブと同じような音をたてて、暗い塊が振動を始める。文貴はその先端をまずは自分の頬にあててみた。そして、少しずつ下へ…少しずつ下ろしていき、首筋、鎖骨を通って、文貴の性感帯である乳首へと到達した。…と同時にものすごい快感が電気のように走り、文貴は思わず「ひゃぁっ!」と声をあげた。まるで声変わりをする前に戻ったみたいな高い声で、文貴は歓喜の声を洩らし続ける。

「ぅん…っはぁ…いい…ち…くび…いい…よぉ…」
目を閉じていると、まるで、誰かの本物のモノがあてがわれているかのように感じて、文貴はますます興奮の度合いを高めていく。文貴のモノは時折脈打ち、全く触っていないというのに先走りの汁があふれ始めている。文貴はさらにバイブを下へと動かし、ついに自分のモノの先端にくっつけた。

「ぃゃぁあぅぁあ…ダメ…ダメ…ぁあっ!」
一瞬で頭の中が真っ白になって、文貴は絶頂を迎えものすごい勢いで射精した。文貴の吐き出した精は、床を汚し、さらには先端のカリ首の裏側にくっつけていたバイブまで白く汚していた。

「はぁ…はぁ…」
あまりの快感に息も絶え絶えだが、そんな本人の意識とは裏腹に、モノは反り返ったまま全く萎える気配がない。

  ローション…いらないや…

  文貴はいったんスイッチを止め、30cmの黒い塊を床に垂直に立てた。それを跨ぐようにしゃがんだ文貴は、うまく調節して先端を自分の後ろへとあてがった。そして、慎重に挿入を試みようとしたその時だった。

「痛ぁぁああ!あああっっっっぁあぁあぁ〜!」

  自分の放出した精液に足が滑ってバランスを崩してしりもちをつくような格好になってしまい、限界まで深くバイブが突き刺さってしまった。しかも、その反動で電源が入り、振動が始まってしまったのだ。突如として快感の渦へと飲み込まれてしまった文貴は、バイブを抜くことも忘れてのたうちまわる。

「うわぁぁぁあぁ…はぁん…ダメ…また…来る…狂う…来る…狂う…ああぁ!!」

  さっき5〜6発も出したというのに、またもや文貴は大量の精を放った。ただ今度は先ほどのような勢いがなく、ダラダラと文貴のモノから流れ落ちた…。バイブをなんとか引き抜いて電源を切った文貴はそのまま気を失ってしまった。

  目を覚ますと窓の外は夕焼け空に変わっていた、床に撒き散らされた精液の海に溺れるような格好だった文貴は、顔や髪がカピカピになってしまっており、とりあえず部屋の掃除をして、シャワーを浴びることにした。

  レモンの匂いがするお気に入りのボディーソープで前と後ろを中心に丹念に洗い、最近日焼けのせいか傷んでいる気がする髪の毛をシャンプーで洗った。中学1年生の生えはじめのころから日課になっているのだが、下の毛の方にも丹念にリンスをしておいた。

  風呂からあがって牛乳を飲みつつ、この快感を自分一人のものにしておくのはもったいないと考えていた。



「…そうだ、勇人なら…」            
 

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